イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

ヴェネツィアの濃紅色

ヴェネツィアを撮った、かつての名画『旅情』の中で、キャサリン・ヘップバーンが真っ赤なゴブレットを映写機に収めようと、背後を確かめようともせずに下がっていき、運河に落ちた広場はサン・バルナバ広場ですが、当の赤い酒杯はヴェネツィアの伝統的な形ということではなく、この映画のためにデザインされたものだと聞きました。

しかしあの真っ赤な色は、ヴェネツィア独特の色のようです。ヴェネツィアに行くようになって思ったことは、ヴェネツィアの人は、あの鮮烈な赤をこよなく愛しているように見受けられることです。

例えば、コンメーディア・デッラルテの登場人物の一人、パンタローネは真っ赤な衣服に黒いマントを羽織るヴェネツィアの商人の役柄です。仮面を着けてもその衣装で彼と直ぐ分かります。あの色はヴェネツィアの象徴ということでしょうか。
パンタローネ[パンタローネ]  赤が目に映える色だということもありますが、ヴェネツィア関連の書物を繙読しながら、絵などの図版を見ていると、赤い衣服の男女の姿が数多く目に飛び込んできます。

サン・マルコ広場近くのヴァラレッソ通りの《ハリーズ・バー》のオーナーのチプリアーニ氏が考案した、薄切りにした生の赤い牛肉を、付け合せのコントルノの上に並べ、白いパルミジャーノ・レッジャーノをあしらい、オリーヴのドレッシングで味付けした料理は、日本でも牛肉の代わりに鮪の刺身で代用させた《カルパッチョ》の名前で知られていますが、これもヴェネツィア人の《赤》好きから来ているのではないでしょうか。

アッカデーミア美術館に行くと、最後の方にカルパッチョの部屋があります。聖ウルスラ伝等の一連の作品が展示されています。中央のソファに腰を下ろすと丸1日でもここで過ごせそうに思ってしまいます。これらの赤を基調にした絵が、料理《カルパッチョ》の発想の原点ではないでしょうか。

美術館は現在工事中です。隣接の美術学校は、旧インクラービリ養育院の修復が終り、本部をそちらへ移動しています。そのあと空いた場所は美術館用として利用されるのでしょうか。
con bitter夕方になると、街の人々は散歩に出ます。あちこちにあるバールやバーカロに立ち寄ります。オンブラ(ワイン)やスプリッツ(カクテル)のはしごをする人は多いようです。スプリッツ(spritz/spriz)にはカンパーリ、アペロール、セレクト(セレとも)、チナール等とのカクテルがあります。全て真っ赤な色です。この飲物はミラーノやフィレンツェ、ローマでは見掛けませんから、ヴェネツィア独自の飲物ということでしょう。

ヴェネツィアは1866年までオーストリアに支配されていました。spritz という言葉はもしかしてドイツ語の《ワインをソーダ水で割った物(spritzer)》から来ているのでしょうか? そこにヴェネツィア人の嗜好が入り込んでこうしたカクテルが生まれたのかもしれません。アルコール拒否症の人にも同じ体裁の真っ赤な飲物が用意されています。

この赤色について伊語を調べると以下のようになりました。
名詞: carminio(カーマイン、洋紅色) chermisi、cremisi(濃赤色、臙脂色) cinabro(朱色、バーミリオン) porpora(真紅色、緋色) vermiglio(朱色、鮮紅色)
形容詞: amarena、paonazzo、purpureo、scarlatto(真紅の、緋色の、深紅色の) bordo`、rosso bruno、vermiglio(朱色の、鮮紅色の) vinato、vinaccio(ワインレッドの)
ヴェネツィア語 cremese(クレーメゼ)=伊語 chermisi(ケルミーズィ)、cremisi(クレーミズィ)
  1. 2008/03/13(木) 18:50:07|
  2. ヴェネツィアの色
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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