イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

Pinacoteca Querini Stampalia(Q)

本土(terraferma)のトゥレヴィーゾ(Treviso)県に住むダーリオさんは、ヴェネツィア人の感覚は不思議だ、と言います。サンタ・マリーア・フォルモーザ(S.Maria Formosa)教会の"formosa"は、伊語で《豊満でセクシー》の意だから、信仰の対象たる聖母マリアの形容語としては奇妙(strano)だと言っていました。

言われて辞書を見ると、formosa は《女性が豊満な、肉付き良く均整のとれた》とあります。prosperoso《ピチピチした、血色のよい》と同義のようです。

ある本ではラテン語の formusus/a =伊語 bello, grazioso(優雅で美しい)がそのまま残ったのだと書いていました。前にも引用した Giuseppe Tassini 著『Curiosita` veneziane』は、聖母を俗語的に(volgarmente)に《S.Maria Formosa》と言っていた、からだとしています。

先頃、渋谷の文化村であった『ヴェネツィア絵画のきらめき』展で展覧された絵画に登場した美女達は、全て formosa で、prosperosa でした。かつては飢饉が多発し、庶民は飢えることが多く、痩せた人が当たり前の社会だったのでしょうから、ふくよかな女性は魅力的で、女性美=豊満ということになった、という文を読んだこともあります。

ヴェネツィア共和国政府は、大運河沿いに今に残るメージョ倉庫(Depositi del Megio)を設置していたように、庶民・市民のために食糧確保には大変気を使っていたようで、この倉庫の役人は食糧量には常に目を配り、必要とあらば買い付けに船を出したり、時には強引な海賊行為にまで及んでいたようです。この共和国政府の姿勢には刮目します。

サンタ・マリーア・フォルモーザ教会にある、パルマ・イル・ヴェッキオ作『聖バルバラと諸聖人』(1510頃)の聖バルバラは大柄で、まさに formosa な感じです。その凛々しい姿はヴェネツィア女性の理想美と言われているそうです。
カナレット『サンタ・マリーア・フォルモーザ広場』パルマ・イル・ヴェッキオ画『聖バルバラ』(部分)[左、カナレット画『サンタ・マリーア・フォルモーザ広場』、奥にフォルモーザ教会が見える。右、パルマ・イル・ヴェッキオ画『聖バルバラ』(部分)]
この広場の東隣の一角にクェリーニ・スタンパーリア小広場(Campiello Querini Stampalia)があり、同名の美術館があります。前述した『ヴェネツィア絵画のきらめき』展で、来日したピエートロ・ロンギとガブリエール・ベッラの絵が多数展示されました。初めてヴェネツィアに行った時ここも訪れました。

今回の日本での展覧会も楽しかったのですが、初めての時は、自分はこれを見るためにここに来たのだ、という思いが込み上げてきました。ヴェネツィアの18世紀の風俗習慣に非常に魅了されていたからでした。

この美術館には、日本の仙台で客死した、ヴェネツィア生まれの建築家カルロ・スカルパ(1906~78)が整備した美しい庭園もあります。

夕方初めて訪れた時、ロンギとベッラの絵に満喫し、1700年代のヴェネツィアに陶酔していると、閉館間近、その入場券でコンサートも聴けますよ、と言われ出席しました。

広間に満席50脚ほどの椅子が並べられるプチ・コンサートです。直ぐ前に今夜の歌手の家族達が並び、幼い男の子が「マンマ!」と手を振ると隣のおじいちゃんにたしなめられていました。

リュートに合わせてのルネサンス歌曲のデュエットは、1時間足らずで終わりましたが、こういう催し事が定期的にここではあるそうです。こうしたヴェネツィア体験がこの街へのこだわりを強めていったようです。
  1. 2007/12/20(木) 00:11:09|
  2. 絵画
  3. | コメント:2
<<Ca' Rezzonico, Museo del settecento veneziano(R)(ヴェネツィア18世紀博物館) | ホーム | Rio tera` S.Paternian(P)>>

コメント

こんにちは! 今回の「少し肥満」の女性のお話を読んでいて、思い出したこと、おおいに納得する事などありますね。
大体、イタリア男性自体が、少し豊満な女性を好むようですね。 痩せているのは、「secca」 と表現されるのは、
ペッシェクルードさんもご存知でしょう?!

「娼婦ヴェロニカ」の映画は、こちらのTVで見たのですが、
肝心の主人公の女優さんが、余りにもすらりとしすぎているので、どうもイメージが湧きにくかったのも、思い出しました。

ロンギの絵も、一度実物を見たいです。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。  良いお年をどうぞ!!
  1. 2007/12/22(土) 21:44:47 |
  2. URL |
  3. shinkai #-
  4. [ 編集 ]

コメント、有り難うございました。
ご指摘のように、あの米映画の女優さんはすらりとした、理知的な人だったように思い出されます。私にとって残念だったことは、ヴェネツィアの風景が全てセットだったことです、フェッリーニ監督の『カサノバ』のように。
昔、伊文化会館の映画週間でカザノーヴァの少年時代を描いた映画を見たことがあります。ヴェネツィアの現風景が沢山出てきましたが、日本語の字幕はなかったので台詞は全然分かりませんでした。
観客は少なかったので、ヴェネツィア大学で1年間日本文学を講じて帰られたばかりの加藤周一氏御夫妻が見えていたのが分かり、印象的でした。
いい年をお迎えになりますように。来年もよろしくお願いいたします。
  1. 2007/12/23(日) 11:40:37 |
  2. URL |
  3. ペッシェクルード #/plE8HKU
  4. [ 編集 ]

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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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