イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

ヴェネツィア年中行事(4)

4月25日はヴェネツィアの守護聖人の聖名祝日、聖マルコの祝日です。Giuseppe Pittano『Dizionario dei nomi propri(名前辞典)』(Manuali Sonzogno, marzo 1990)に《マルコ》についての記述がありますので、引用してみます。
「マルコはラテン名 Marticus(戦いの神マルスの)に由来。それ故1年の第3番目の月名と同義である。Marcus と Martius は Mars の二つの形容詞形である。ローマ暦の1年の3番目の月は正に戦争の神に捧げられたのである。

《マルコ》の名は非常な幸運を意味し、それはローマ時代のパレスティナのヘブライ民族でもそうであった。聖ペテロと聖パウロの弟子であり代弁者であったマルコは、4人の福音史家の一人である。

伝説によれば、彼はエジプトのアレクサンドリアで殉教したという。彼の骨は828年、2人のヴェネツィア商人が盗んで、食料品を一杯に積み込んだ大きな籠の下に隠して、持ち去った。こうして聖人の遺体はヴェネツィアに到着し、聖マルコは町の守護神となり、世界で最も美しい教会の一つ、サン・マルコ寺院に保管されている。
ジェンティーレ・ベッリーニ画『サン・マルコ広場の祝祭行列』部分[ジェンティーレ・ベッリーニ画『サン・マルコ広場の祝祭行列』(部分)。この日(4月25日)の行列は大変華麗でヨーロッパではよく知られていたものだったそうです。]

マルコの名を持つ多くの人の中には、ローマの有名な雄弁家マルクス・トゥッリウス・キケロ(Marco Tullio Cicerone)、ローマ五賢帝の一人マルクス・アウレリウス(Marco Aurelio)、ヴェネツィアの探検家マルコ・ポーロ(Marco Polo)、アメリカの小説家マーク・トゥエーン(Mark Twain)、イタリアの政治家マルコ・ミンゲッティ(Marco Minghetti、1818~86)とマルコ・パンネッラ(Marco Pannella、1930~ )、15世紀のボローニャの画家マルコ・ツォッポ(Marco Zoppo)、ダンテが、その昔の《雅な心》のシンボルとして『神曲』煉獄篇第14歌で引用したマルコ・ロンバルド(Marco Lombardo)等。

また現代人としては画家マルク・シャガール(Marc Chagall)、映画監督のマルコ・フェッレーリ(Marco Ferreri)[日本公開は『最後の晩餐』『ありきたりな狂気の物語』など]、マルコ・ベッロッキオ(Marco Bellocchio)[日本公開『肉体の悪魔』『新肉体の悪魔(蝶の夢)』(私の大好きな映画)、『夜よ、こんにちは』等]など。

文学作品の中で思い出されるのは、マルコス・デ・オブレゴン(Marcos de Obrego'n)である。スペインの作家にして音楽家だったビセンテ・エスピネル(Vicente Espinel、1550~1624)の有名なピカレスク小説『従者マルコス・デ・オブレゴンの一生(La vita dello scudiero Marco de Obrego'n)』の主人公である。

マルコ・イヴァノヴィチ・ヴォロチョフ(Marco Ivanovic' Volochov)は、ゴンチャロフ(Ivan Gonc'arov、1812~91、ロシアの作家)の小説『断崖(Burrone)』の登場人物で、このニヒリスティックな革命家は不正や偏見と闘うのである。

マルコの名前を持つ人は、福音史家マルコに捧げられたこの日、4月25日の聖名祝日にお祝いをする。」
  ――ジュゼッペ・ピッターノ『名前辞典』(Manuali Sonzogno、1990.03)より

Marco の変化形には、Marchetto、Marchino、Marcolino、Marcuccio、二重形 Marcantonio、女性形 Marca、Marchina、Marcolina、Marcuccia。

同名の外国人名には、英 Mark(マーク)、Marcus(マーカス)、独 Mark(マルク)、Markus(マルクス)、仏 Marc(マルク)、西 Marco(マルコ)、Marcos(マルコス)、葡 Marcos(マルコス)、蘭 Marcus(マルクス)、瑞 Marcus(マルクス)、希 Markos(マルコス)、露 Mark(マルク)等。[欧州では例えば、独の Markus は伊国では Marco、西国では Marcos 等と呼び変えるのが原則です。それ故 Mark Twain は伊国では Marco Twain とも書かれたりします。]

サン・マルコ寺院ではこの日ミサが執り行われます。そして女性には真紅の薔薇の花を捧げる風習があります。捧げる人は、妻、母、娘、祖母、恋人、友人など全ての女性です。この日は教会の前などでも花屋が真紅の薔薇を売り、薔薇を売り歩く外国人の花売り等も沢山見掛けます。知り合ったパーオラは、夫と長男を事故で同時に亡くしたのでしたが、残された次男のジャーコモがこの日には薔薇を呉れると嬉しそうでした。

この風習の由来として、《総督の娘に恋をした下級貴族の若者がその誠意を総督に示そうとトルコとの戦いに出征し、致命傷を受け、白い薔薇の茂みに倒れ込み、周りの純白の薔薇を血で赤く染めた。瀕死の青年はその薔薇の一輪を手折って従者に託し、愛する人に届けてくれるように言い終えて、事切れた》という話が伝わっているそうです。

2008.11.02~2008.11.22日のヴェネツィアの聖マルコ伝説(1)~(3)に聖マルコについて書いています。ご参考までに。
  1. 2011/01/22(土) 00:04:00|
  2. ヴェネツィアの行事
  3. | コメント:4
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コメント

ペさん、こんにちは。
名前のことですが、私の息子が生まれたときに名前を「Marco」
とか 「Mario」 とか付けたかったのに、女房のあえない反撃にあいま
した。「Mark」ならいいと彼女は言ったのですが、ありふれすぎる
と、これは私が拒否。けっきょくふたりが合意した唯一の名前は
よりによって「太郎」 でした。
  1. 2011/01/23(日) 04:22:47 |
  2. URL |
  3. September30 #MAyMKToE
  4. [ 編集 ]

seotember さん、コメント有り難うございます。
先日、フェンシング競技のところで書いた、初めてのイタリア旅行で知り合った、
ミラーノのマルコは二度目のヴェネツィア行の時(カーニヴァル見物)、出立直前に
ミラーノから東京まで4日で着く手紙を呉れて、「お前の見たがっているフェニーチェ
劇場が焼失した」と連絡呉れました。
当時のイタリアの郵便事情から,4日で到着する超特急便があるのに驚き、出発に
間に合うように手紙をしたためて、送ってくれたマルコの親切に大変感謝した
ものです。こういう出会いがイタリアにのめり込むきっかけだったのでしょう。
  1. 2011/01/23(日) 07:49:06 |
  2. URL |
  3. pescecrudo #/plE8HKU
  4. [ 編集 ]

こんばんは! 上のSeptemberさんのお子さんの名についてのコメントに、
つい吹き出しました。 すみません! 
太郎という名前はいかにも男の子の名で素晴らしいと思うのですが、
マルコ、マリオからの方向転換が可笑しい、と、
またまた申し訳ありません!

この4月25日はイタリアの国の「解放記念日」の祭日にも重なるのですが、
やはりヴェネトのニュースでは、サン・マルコの祭日が大きく出ますね。
今年は出来たら「センサのお祭り」に参加したいと思っているのですが、
年中行事5を楽しみにしています!


  1. 2011/01/23(日) 18:40:02 |
  2. URL |
  3. shinkai #-
  4. [ 編集 ]

shinkai さん、コメント有り難うございます。
さすが読みが深いですね。実は次回はセンサについて書きます。
パンフレットの翻訳ですから、ご希望に添うかどうかわかりませんが。
是非とも、「センサの祭」の shinkai さんの現場中継をよろしく
お願いします。期待して待っています。
  1. 2011/01/24(月) 12:02:33 |
  2. URL |
  3. pescecrudo #/plE8HKU
  4. [ 編集 ]

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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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