イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

文学に表れたヴェネツィア――フィリップ・ソレルス

フィリップ・ソレルス(1936.11.28ボルドー~ )については、2009.08.08日の文学に表れたヴェネツィア―プルースト中、その著書『ヴニーズ――愛の辞典』の中で「プルーストの人生と『失われた時を求めて』の全ての道はヴニーズへと至る。……ヴニーズとは見出された時である。……」と書いていると触れました。

日本では『公園』(岩崎力訳、新潮社、1966年3月30日)以来、『神秘のモーツァルト』(堀江敏幸訳、集英社、2006月12月)、『女たち』(鈴木創士訳、河出文庫、2007年12月)等翻訳出版されています。その中で『ゆるぎなき心』(岩崎力訳、集英社、1994年5月25日)は、彼の関心の一つであるのか、この小説中、Ⅳ章は場面がヴェネツィアに設定されています。
フィリップ・ソレルス『ゆるぎなき心』Ⅲ章の終わりで次のように書かれています。
「……《いや、昨日電話をかけてきた。つまり、ちょうど一年後に。たいへん結構なことさ。しかしぼくたちはヴェネツィアに出かけるから…》《あたしも出かけるの?》《今度の金曜日に。もちろん、君もそうしたいならということだけれど》《シグリッドもいっしょ?》《いけない?》《チェチーリアは知ってるの?》《ぼくが電話する。それとも君がする?》《あたしがするわ》《創立いらいはじめて結社のメンバーがヴェネツィアに集まるわけだ》……」

そしてⅣ章はヴェネツィアの場面です。哲学的なお話であったり、ヴィヴィッドな考察であったり、ポルノチックな描写であったりして、読者を先へ引っ張っていきます。

「……二本目のキアンティも空けてしまう…  そしてラ・フェニーチェのほうへ歩いて行く…  二人はそれぞれぼくの腕につかまりながら、興奮して無礼なことを言いつづける…  いまは真暗な小路…  白い橋…  リヴは『フェードル』の台詞をすこし口ずさむ…  シグリッドは『コシ…』を小声で歌う…  警官の最初の検問線に着く…  ナイフは自宅に置いてきた… 

あちこちから招待客が集まってくる…  イヴニングドレス姿のご婦人がたがハンドバッグを開けてみせ、スモーキングの殿方は、胴と脚をそっと探られる…  上海から持ち帰ったぼくの毛沢東風の上着を見て、検札係はけげんそうな顔だ…  新左翼の先史時代の名残りだが、迷信からとっておいたもの…  ぼくは封をしたマルコの手紙を差し出す…  《モルト・ベーネ、アヴァンティ》[結構です、どうぞ]…  」

「……リヴは眠り込む…  ぼくはラ・サルーテのほうへ散歩に行く…  天使たちはあの上のほう、暗闇のなかに立っている…  もう千回も歩いたところだが、いつもはじめてのようだ。ルイーズ、インゲ、ソニア…  水の夜、空気の夜、ほとんど明かりもなくその二つの夜が並行している、さわやかな石の地平線、規則正しいかすかな水音… 

ザッテレ・アイ・サローニ…  ポンテ・デルミルタ…  向こう側はサン・ジョルジョとレデントーレ教会…  そして巨大なエンポリオ・デイ・サリ[塩取引所]…  いまは《ブチントーロ》海運会社の本部であり、ほっそりした、横から見た形の美しい、つやのある船でいっぱいの倉庫になっている…  その先がカ・バラ…  そしてザッテレ・アッロ・スピーリト・サント…  そしてアリ・インクラービリ…  そして最後にアイ・ジェズアーティ… 
……」
  ――『ゆるぎなき心』(岩崎力訳、集英社、1994年5月25日)より
  1. 2011/09/17(土) 00:03:47|
  2. ヴェネツィアに関する言葉・文学
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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