イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

言葉(1)――唱え詞・遊び言葉

幼年期から少年期に掛けて耳に入ってきた、遊びに纏わる言葉や童唄、呪文の類は何十年経っても記憶装置に固着しているようで、ふとした弾みに口に上ってきます。先日も『鐘の鳴る丘』の主題歌が口に付いて出て来、第一番全部が空で歌え、何とも甘く懐かしいような不思議な心地になりました。

呪文、唱え詞、童言葉と言われるものに、例えば《無花果、人参、山椒に椎茸、牛蒡に零余子、名草、薑(はじかみ)、九年母、唐辛子》とか《ちちんぷいぷい、ごようのおんたから》《鬼さんこちら、手の鳴る方へ》《ここまでお出で、甘酒進上》また《かっちゃん、かずの子、にしんの子》《みっちゃん、みちみち、うんこたれ……》そして《夕焼け小焼け、あーした天気になーれ》と願い事して、履いている下駄の片方を足指から蹴っ飛ばし、下駄の表裏で明日の天気を占ったり。

少年時代過ごした故郷で、面子遊び[田舎ではペッタイと言いました]を学校の砂場等で始める前、最初にメンコを波打つ砂上に張る時、《ジンジョウ、イッペンタン、カマトル》と宣言して始めました。意味は波打った砂の上で、メンコがどういう危険な状態にあっても位置を直そうと触れば、その札は対戦相手の物になるという不文律です。《尋常に、勝負、勝負!》。

紙芝居の『桃太郎』で、一番最後の《めでたし、めでたし!》の終了の言葉に、《いっちがむかしがつっさけた》とあり、その口調の良さで今でも口が叫びます。

イタリアにも子供の遊びの時に唱えられる、音調の良い言葉(eufonia)、語呂合わせ的な口吟む遊び言葉があり[早口言葉等は、語学テキストなどに掲載されているのを何度か見ました]、メモっておいた幾つかがあります。書き写し間違いの語句もあるかも知れませんが、列挙してみます。

先ず隗より始めよ、
『アリ・ババと四十人の盗賊の物語』から宝物の詰まった洞窟を開く呪文《開け、胡麻!(Apriti, sesamo―アープリティ・セーザモ)》。(宝の山に入りながら、手をむなしゅうしてけえるのか……)

《かごめ、かごめ、籠の中の鳥は、いついつ出やる、夜明けの晩に、つるとかめがつうべった、うしろの正面だーれ》という童戯の時に口吟まれる文句はイタリアにも同じような意味合いのものがあって、以下がそれだそうです。《Giro giro tondo, casca il mondo, casca la terra, tutti giù per terra.…… (回れ、回れ、輪になって回れ、世界が倒れて、地球も落ちて、全ては崩れる)》
Giro-tondo絵はPCの Giro tondo のサイトから借用。You Tube で検索すると歌も聞くことが出来ます。次です。《Giro-tondo
遊技の中で、何かを決める時にジャンケンで決定することは多いでしょう、日本式ジャンケンは morra cinese と言い、《bim, bum, bam―ビン・ブン・バン》と掛け声を交わします。
また、鬼さん誰にしようかな? という時の唱え詞は《Pimpiripettannuse, pimpiripettappà―ピンピリペッタンヌーゼ・ピンピリペッタッパ》と唱えるそうです。
同じように遊びでの順番を決める時、《Ambarabà cicci coccò.(アンバラバ・チッチ・コッコ) Tre civette sul comò che facevano l'amore con la figlia del dottore, il dottore si ammalò. Ambarabà…)》というのもあるそうです。

言葉遊びとして、《Il baco del caro del malo. Il beco del cero del melo. Il bico del ciro del milo. Il boco del coro del molo. Il buco del curo del mulo.》があると、ナターリア・ギンズブルグの小説にありました。

《Abracadabra―アーブラカダーブラ》 病魔を追い払う時等に用いる逆三角形に書かれた呪文。実際にこの言葉が言われたのは映画『ニューシネマパラダイス』で、広場に集まった群衆に喜劇役者トトの映画を見せようとアルフレードが広場の建物の壁面にシーンを映す(その後火事になる)時に、うまくいきますようにと、アルフレードは念じます。
《Balabin balabà―バラビーン・バラバ》 よいしょ、こらしょ!
《Cucù, cucù, eccomi!―クク・クク・エッコミ!》 居ない、居ない、バー!

トランペット奏者の演奏は、《Turum tum tum, turum tum tum, teretetè teretetè, retetè retetè……》
ロッシーニのオペラの中には次のような不思議な音が沢山出て来るそうです。《cra cra, bum bum, din din tac tac》、《zitti zitti, piano piano》、《misipipi pipi pipi》、《zuma zumi zuma zumi》 [《クラクラ、ブンブン、ディンディン・タクタク》は、ロッシーニが作曲家 Carlo Coccia の作曲の遅れで急遽1813年4月末代役を頼まれ、同年5月22日ヴェネツィアのサン・ベネデット劇場(この劇場の所有者は土地を所有するヴェニエール家に追い払われ、他の場所にフェニーチェ劇場を造ることになります)でロッシーニ自身の指揮で初演され、大成功を収めた作品『アルジェのイタリア女』の中で歌われました]

さてどん尻に控えしは磯風荒れえ小ゆるぎの磯慣(そなれ)の松の曲がりなり、……
《例によって例の如し》 ≪Rieccoci alle solite.≫
《成るように成る(ケ・セラ・セラ)》 ≪Sarà quel che sarà.(Chissà che cosa ci riserva il domani.)≫
《賽は投げられた》 ≪Il dado è tratto.(Alea iacta est.)≫
《王手!》 ≪Scacco al re!≫
《まさか! もうどうしようもない》 ≪Ma va! Non ce la faccio più.≫≪Non so dove sbattere la testa.≫
《万事休す! 詰んだ!》 ≪Tutto è perduto! È scacco matto!≫
《後は野となれ山となれ(行方が分からなくなった)》 ≪Chi s'è visto s'è visto.≫(持ってけ泥棒)
《それが人生だ!》 ≪Questa sì che è vita!≫
《めでたし、めでたし!》≪E vissero felici e contenti.≫[童話の始まり:C'erano una volta~に対応する童話の終り(そして幸せに暮らしましたとさ。)]
《喜劇は終わった!》 ≪La commedia è finita!≫[ルッジェーロ・レオンカヴァッロ作のオペラ『道化師(I Pagliacci)』の中の最終場面で、カーニオが呟く最後の台詞]
  1. 2012/03/10(土) 00:01:02|
  2. ヴェネツィアに関する言葉・文学
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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