イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

映画『テルマエ・ロマエ』とラテン語

映画『テルマエ・ロマエ』を先日新宿で見て来ました。大変楽しく、面白く笑って見ました。顔の平べったい私は、同族のかくも平たい顔族を掻き集めている《笑撃映像》に大笑いしたことでした。イタリアでの公開も決まったそうなので、古代ローマ人の子孫達も笑って楽しんでくれるでしょう。全ての道(笑い)はローマに通じます(Tutte le strade portano a Roma.)。
ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』帯それにしても主演の阿部寛さんの分厚い胸の盛り上がった裸体は西洋人に劣らぬ立派なもので惚れ惚れ見ました。何しろ1時間以上前に映画館に到着したのに、全席満席でたまたま空いていた一番前の席で見たものですから大迫力です。この近年、一般公開映画で満席というのは初体験でした。かつて映画全盛期は、立ち席で人影から画面を覗くのは当たり前でしたが。

和製ローマ人の濃い顔1位に選ばれた北村一輝さんが登場するNHK・TVイタリア語講座番組では、ローマのフィルムを楽しんでいます。映画でルシウスが喋った“Lusius sum.”[私はルシウスです]の台詞が聞こえ、何度も挫折したラテン(羅典)語学習に再挑戦する気力を貰いました。名詞の格変化の多さに意欲を削がれっぱなしだったのです。そこで次の本を読んでみました。
國原吉之助編著『新版 中世ラテン語入門』ジュゼッペ・パトータ『イタリア語の起源』今まで羅典語の発音は、イタリア人が自分達の言語の読み方に合わせて都合よく発音しているに違いないと、真に浅く思い込んでいました。ところがそうではなくキケロ等の古典羅典語(書き言葉)の時代から中世羅典語の時代へと言葉が変化し、特に話し言葉としての俗語ラテン語はより変化が激しく、今のイタリア語等に変化していったので、イタリアで話されるラテン語は、イタリア語になる直前のラテン語の発音だということのようです。

ですから中世に作詞作曲された、教会で歌われる聖歌等はその時代の発音(カトリック式ラテン語)だということです。音楽事典によりますと、例えばラテン語聖歌 Magnificat(聖母マリアの頌歌)は《マニフィカト》の発音であり(小学館の『伊和中辞典』には、マグニフィカトとありますが)、Regina caeli(天の元后)は《レジナ・チェリ》であり(レギナ・カエリではなく)、Dies irae(怒りの日)は《ディエス・イレ》(ディエス・イラエではなく)、Agnus Dei(神の子羊)は《アニュス・デイ》である(アグヌス・デイではなく)と書かれています。

そうすると『テルマエ・ロマエ(Thermae Romae―女性複数形)』は、中世俗語では《テルメ・ローメ》と発音されたのでしょうか。《テルメ》という発音で気付くのは、伊語の terme(複数形)と同じ発音で、現在意味は《温泉》ですが、古代ローマでは《公衆浴場》の意とあります。thermae → terme と中世ラテン語の発音が伊語にそのまま残ったようです。古典羅典語で発音していると気付かないところです。

フランスの哲学者デカルト(1596~1650)の《コーギトー、エルゴー・スム(Cogito, ergo sum)》は、高校の世界史で《我思う、故に我在り》と教わりました。最近仏語辞典を引いてみますと、《Cogito(コジト)》と発音記号が書いてありました。フランスでも当時“gi”を《ジ》と発音していたと思われますが、日本ではコギトと読むことになっているようです。戦前《蝶々》を歴史的仮名遣いで《てふてふ》と書き、《ちょうちょう》と発音していたのが思い起こされます。古典羅典語式発音で、《てふてふ》とそのまま発声したら、誰も分かって呉れないでしょう。                       

この中世ラテン語俗語の発音(イタリア語式)で羅典語を勉強してみると、ラテン語が伊語にそのままの形で残っている単語が沢山ありそうなことに気付きました。しかし casa 等、伊語の casa と異なって capanna と若干意を異にするような言葉もあるのでしょうが、それにしても同じような単語が沢山あるというのは、伊語を学習する者にとっては非常に取っ付き易く思われます。この発音でアタックすれば伊語との共通項がかなりあり、とけ込み易く、伊語の理解も深まりそうに思われます。因みに Zanichelli 社の『新ズィンガレッリ(Zingarelli)伊伊辞典』には、その言葉がどんな羅典語から来たのかの記述があります。

ヴェネツィアやローマに行った時、ラテン語の碑文が建物正面に掛けてあったりして、読めなくて残念な思いをしたのはいつものことでした。次回の渡伊の時、何とか読めて理解出来るようになりたいと 愛着の湧いたイタリア語式で挑戦すれば勉強も続くかもしれません。いずれにしてもローマでアウグストゥスのアラ・パキス(Ara Pacis Augustae)を《アラ・パチス》と発音すれば直ぐに現地の人に分かってもらえると期待しています。郷に入っては郷に従え(Quando a Roma vai, fa' come vedrai.)です。
〈カトリック式ラテン語〉[NHK《日本語における外国語の表記と発音》(昭和37年8月)より] 発音方法は左の《カトリック式ラテン語》が参考になります。イタリア語を勉強している方へのイタリア語式発音による、ラテン語へのお勧めでした。
[しかしこのブログでは守護聖人等の名前は、例えばSanta Lucia(サンタ・ルチーア、聖ルチア)は“聖ルキア”と日本で通用する古典羅典語式で表記しました。]
  1. 2012/06/09(土) 00:05:54|
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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