イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

ヴィットーレ・カルパッチョ(4)

ヴェネツィアに足を運ぶようになって特に好きになった画家、ヴェネツィア人も大変愛していると思われるのですが、それがカルパッチョ[1465頃ヴェネツィア~1526カポディーストリア(現イストラ半島、スロヴェニアのコーペル)]です。『ヴェネツィア人物辞典(I personaggi che hanno fatto grande Venezia)』(Marcello Brusegan著、Newton Compton Editori、2006.11)によれば、彼の生涯は下記のようです。
『ヴェネツィア人物事典』生没年については他の資料では、《1455-65ヴェネツィア~1525/26ヴェネツィア/カポディーストリア》ともありますし、ダルマツィア地方出身ではないかとも言われています。

「ヴィットーレ・カルパッチョは1465年頃ヴェネツィアに生まれた。1400年代後半のヴェネツィアの人文主義的環境の中で人間形成をし、非常に個性的なスタイルを発展させながらも、この期の最も時代に沿った潮流からは距離を置いていた。事実、謎に満ちた生活を送った画家であり、現在もはっきりしない教育環境に育った。

多くの評論家達は、ジェンティーレ・ベッリーニ、ラッザロ・バスティアーニ、ジャンベッリーノの影響下にヴェネツィアでの画家人生を始めたと考えている。しかし確かと考えられることは、彼の作品に秘められた複雑に暗示するものから、アントネッラ・ダ・メッシーナと関わりがあったということと、マンテーニャの作品とピエーロ・デッラ・フランチェスカのフェッラーラのシリーズを具に検討したであろうと思われることである。

聖人達の物語を描いた沢山のキャンバス作品から言えるように、とりわけ物語性のある画家として成長した。彼の最初のキャンバスのシリーズは『聖女ウルスラの物語(Storie di Sant'Orsola)』を描いたもの(現在アッカデーミア美術館に収蔵)で、1490年からサントルソラ同信会館[Scuola とは小学館の伊和辞典の第6番目の意味にあるように信者会(またその集会所)の意で、ここでは同信会館と訳しています。学校ではありません。この組織は言わば、信仰を同じくする互助会的な組織で、ドイツなどのギルド的な、職人的な集まりのことです]の礼拝堂のために描かれた。
サントルソラ同信会館[サン・ザニポーロ広場に面した旧サントルソラ同信会館(Scuola di sant'Orsola)は、別名サン・ザニポーロ(サンティ・ジョヴァンニ・エ・パーオロ)教会の同信会館でした。]

それらは『聖女ウルスラの殉教(Martirio di sant'Orsola)』『イギリス大使の帰還(Ritorno degli ambasciatori inglesi)』『聖女ウルスラと王子エテリウス[『黄金伝説』(下記に紹介)では Ereo はアエテレウス]の暇乞いと巡礼への出発(Commiato di sant'Orsola ed Ereo e partenza dei pellegrini)』『ローマ到着(Arrivo a Roma)』等である。

これらの作品ではその場面は、あるヴェネツィアが場面設定されているのだが、それは実景ではなく想像的に描かれている。当時のヴェネツィアの実際の建物ではなく、それらによく似た姿で描いたということである。その上そのシーンの中には、水晶のように透明な、乾いて澄んだ遠近法的空間が満ち溢れている。

1501-02年頃ベッリーニの下で総督宮殿の元老院と大議会の間に描いた幾つかのキャンバス画は、残念ながら1571年の大火によって焼失してしまった。
サン・ジョルジョ・デッリ・スキアヴォーニ同信会館[サン・ジョルジョ・デッリ・スキアヴォーニ同信会館] その後サン・ジョルジョ・デッリ・スキアヴォーニ同信会館に描いた『聖ゲオルギウス、聖ヒエロニムス、聖トリフォンの物語(Storie di san Giorgio, san Gerolamo, san Trifone)』と2点の福音史家の物語『聖マタイの召命(Vocazione di san Matteo)』『ゲッセマネ(菜園)の祈り(La preghiera nell'orto)』そして同じ年に他にも沢山の作品を描いた。いわゆる『2人のヴェネツィア貴婦人(以前は"Cortigiane"と言われていた)』や『騎士の肖像(Ritratto di Cavaliere)』等である。

最も後期の作品は地方から注文されたものである。例えばムラーノ島のサン・ピエートロ・マルティレ教会[作品は現在、シュトゥットガルトに在]やフェッラーラのサンタ・マリーア・イン・ヴァード教会の祭壇画である。

人生最後の年は、カポディーストリア(スロヴェニアのコーペル)大聖堂の主祭壇画とオルガンの開き扉絵である。1526年彼はこの地で亡くなった。

1504~08年と推定される素晴らしい6枚の作品がある。アルバニア・シリーズとしての『聖母マリアの物語(Le storie di Maria)』は有名で、1808年までアルバニア人同信会館のアルベルゴの間(ま)を飾っていた。そしてヴェネツィアの同信会館がナポレオンの命令で廃止の憂き目にあったその日付(1808)の日から、ロンバルディーア・ヴェーネトのフランス人副王が勝手に振る舞い、それらの作品を他の美術館等にばら撒いてしまった。
アルバニア人同信会館[サン・マウリツィオ教会左隣、ピオヴァーン通りの旧アルバニア人同信会館。現在は弁護士さんの住居となっています]
その内今日ヴェネツィアで見ることの出来るのは3点である。2点はカ・ドーロのフランケッティ美術館の『受胎告知(Annunciazione)』『聖母子(Madonna col Bambino)』、1点はコッレール美術館の『聖母マリアの聖エリザベツ訪問(Visitazione)』。他にヴェネツィアで見ることの出来る重要な作品は、サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会の『竜を退治する聖ゲオルギウス(San Giorgio in lotta col drago)』(1516、油絵具、画布)、サン・ヴィターレ(S.Vidal)教会の『馬上の聖ヴィタリスと聖母を崇める4聖人(Gloria di San Vitale)』(1514、油絵具、板絵)、そして総督宮殿の『サン・マルコの獅子(Leone di San Marco)』(1516、油絵具、画布)である。」
  ――Marcello Brusegan『ヴェネツィア人物辞典』(Newton Compton Editori)より
『受胎告知』馬上の聖ヴィタリス『サン・マルコのライオン』[左、『受胎告知』。中はサント・ステーファノ広場一角のサン・ヴィターレ教会祭壇画『馬上の聖ヴィタリス』。右は総督宮殿の『サン・マルコの獅子』(『ヴェネツィア展』で来日)]
リアルトのサン・サルヴァトーレ(S.Salvador)教会の『エメイウスでの晩餐』という祭壇画は、2004年頃カルパッチョ作品と同定され、作品の説明板にカルパッチョという訂正札が貼られていましたが、やはり彼の物ではないらしく、最近確認すると訂正札が剥されていました。またヴェネツィアの隣町キオッジャ港近くのサン・ドメーニコ教会(Santuario S.Domenico)にも『聖パウロ(S.Paolo stigmatizzato)』(1520)という作品があります。
エメイウスでの晩餐カルパッチョの『S.Paolo stigmatizzato』『エメイウスでの晩餐』と『聖パウロ』
『黄金伝説』[聖女ウルスラ(Sant'Orsola)や聖ゲオルギウス(S.Giorgio)、聖ヴィタリス(orウィタリス―S.Vitale)という聖人達の事績については『黄金伝説』全4巻(ヤコブス・デ・ウォラギネ著、前田啓作他訳、人文書院、1979~1987年)/再版、平凡社ライブラリー『黄金伝説』全4巻(前田啓作・今村孝・山口裕・西井武・山中知子訳、2006年5月10日~)にあります。]

カルパッチョの絵画作品については、次のサイトをご覧下さい。Vittore Carpaccio。尚、昨年9月23日東京会場から始まった『ヴェネツィア展』は、名古屋、宮城、愛媛、京都と1年かけて日本を回り、現在最終展示が広島会場(~11月25日まで)で行われています。日本でカルパッチョの作品を鑑賞出来る最後の機会です。
  1. 2012/10/27(土) 00:04:52|
  2. | コメント:0
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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