イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

天正のローマ使節(5)[天正遣欧使節とも]

ブレンタ川(運河)河畔に建つ、アンドレーア・パッラーディオら建築家の手になるヴェネツィア貴族の瀟洒な別荘などの建物を見学に、ブルキエッロ号という船でヴェネツィアのサン・ザッカリーア桟橋からパードヴァまで行ったことがあります。

船はフジーナの運河口から内陸を遡行します。水面にまで達する柳(salice piangente)の垂れる運河を昇っていくと、最初にレオナルド・ダ・ヴィンチ考案と言われるモランザーニ閘門が行く手に現れます。その構造とは:
「……一種の貯水池を設け……水門を利用して……水を貯め……それを放流するようにしつらえ、船が下流から上がって来ると、このところで一定の仕切りの中に入れ、水門を閉じて徐々に水を入れて水位を高め、それが上流の水位と一致するまでになると、船は平らな水面を上流に向って送り出され、反対に上流から来た船は水をいっぱいにした仕切りの中に入れられ、水門を開きつつ徐々に水を放出して水面を下げ、これに応じて次第に高度を下げた船は、下流の流れと水面が一致したとき下流にむけて送り出される……」

『デ・サンデ 天正遣欧使節記』(1590年マカオ刊、新異国叢書5、泉井久之助、長澤信壽、三谷昇二、角南一郎訳、雄松堂書店、昭和44年9月30日)は、この閘門を上記のように説明しています。天正使節達はこの運河を遡ってヴェネツィアを後にしたのでした。その後パードヴァで3泊し、次の町ヴィチェンツァには7月9日に到着しました。

当時ヴィチェンツァは、アンドレーア・パッラーディオ(1508~80)の設計になる世界初の屋内劇場テアートロ・オリンピコが開場し、記念行事でソフォクレース作『オイディプース王』の公演等が行われている最中だったそうです。
テアートロ・オリンピコの図録[テアートロ・オリンピコの図録] パッラーディオは1580年劇場の建設が始まるや亡くなり、建設は設計図を持っていた息子のスィッラと弟子のヴィンチェンツォ・スカモッツィによって進められました。

現在残っている、背後の舞台装置はパッラーディオの物ではなく、スカモッツィが悲劇『オイディプース王』舞台のためにギリシアのテーバイの町並みを設置したのが評判がよく、そのまま現代まで残ったのだそうです。
オリンピコ劇場舞台[オリンピコ劇場舞台] 天井には青空、白い雲が描かれて、座席に座るとまるで屋外劇場の雰囲気です。この青空の絵もパッラーディオの物ではなく、1914年に付け足されたものと図録にあります。

4人の使節の絵が残されていると聞き、劇場を訪ねたのです。舞台のあるホール前室の天井直ぐ下にモノクロのフレスコ画が数点ありました。初めて見た時はどれが彼らの物か全然分からなかったので、係の人に聞きました。その絵の説明文のような一節が『デ・サンデ 天正遣欧使節記』にあります。
天遣歐使節[追記(2010.05.11)=劇場での4使節] 「……この都のある劇場へ、この都のほとんどすべての貴紳・貴婦人がわれわれのために集まって下さった光景を見て感じたわれわれの不思議なほどの喜びである。この劇場では学士院会員と呼ばれる博学の士によって、悲劇や喜劇やその他の劇が豪奢に、またきらびやかに、民衆の観覧に供するために演出されるのが常である。われわれはここで丁重な歓迎を受け、各種・各様の実に快い交響曲を聞いて、大いに心を楽しますことができた。……」(『デ・サンデ 天正遣欧使節記』より)

翌日には使節達は、ヴェローナに向かい、その地で3泊します。そして7月13日にはヴェローナを発ち、ヴェネツィア共和国に永遠の別れを告げました。
  1. 2008/04/18(金) 20:57:25|
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは十数年前。ヴェネツィアには即一目ぼれ。
その結果、伊語勉強のためにヴェネツィアの語学学校に何年間か数ヶ月通いました。
その後もヴェネツィアを訪れるたび、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら書くのが楽しいのです。

*図版はクリックすると拡大されます。

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