イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

海との結婚式(2)

「……およそ2世紀後の1177年、教皇アレクサンデル3世が、総督セバスティアーノ・ズィアーニが皇帝赤髭王フリードリヒ(Federico Barbarossa)との和解を手助けしてくれたその感謝の印に黄金の指輪を与え、有名な次の言葉を吐いた。《あなたとあなたの後継者が、永遠に海を統べる印として、この指輪を受け取って頂きたい》と。
[2010.04.24日に書いたアッカデーミア美術館も御参照下さい。]

そして年代記作家マリーン・サヌードによれば、次の文言が付加されたという。《……lo sposasse lo mar si come l'omo sposa la dona per esser so signor(男がその主人として女と結婚するように海と結婚した)》。

その上教皇は続く1週間、サン・マルコ教会に祈りに赴く人全てに罪の免償を授けた(その後の年は2週間となる)。その年から《海との結婚》という海とヴェネツィアが神秘的に結び付いた祝祭の伝統行事が始まった。

祝祭は豪華絢爛たるものであった。総督は総督宮殿の部屋にアルセナーレ造船所の親方衆を迎え、彼ら提供の《merenda remiganti(船漕ぎの点心)》を口にし、喇叭の鳴り響く中、代表達が乗船するブチントーロ船にお付きの者、司祭達、大使達、十人委員会の長達らと乗り込んだ。

帆桁に立てられた総督旗が翻り、アルセナーレの長官は命令を下す。祝祭用に飾り立てられた種々の形・色の、沢山の船列が付き従い、総督の船がリードのサン・ニコロ港に向けて出発する(“海への行進”である)。

船列はサンテーレナ島前で暫しの停船をし、そこの修道院の修道士からお祝いの挨拶を受ける。更にもう一度リード島の傍で停船し、カステッロの司教(1451年以後は総大司教)を船に迎える。司教は全ての上級宗教関係者と共にペアトーナ船(大きな平底船)でブチントーロを待ち受けている。

リード港の入口まで“行進”は進み、サンタンドレーア要塞の前で総大司教が祝福された清めの水を海に注ぎ、総督は舳の窓から金の指輪を、正にその場所に落としながら宣言する。《Desponsamus te, mare nostro,in signum veri perpetuique dominii(我らが海よ、お前と結婚する、未来永劫に渡って統治する印として)》と。

この儀式でセンサ(Sensa=伊語 Ascensione キリスト昇天祭)の祝日は幕を開け、パーティやスペクタクルの催しがあり、イタリア各地から到来する香具師や祭礼演歌師らが町を賑やかにする。サン・マルコ広場では、色々のタイプの全国各地からの産品が、この日のために張られたテントや木造の小屋掛けの屋台に並ぶ。色々の国からやって来た人達が屋台とカフェテリアの間を練り歩く。雰囲気は正に国際色豊かな真の見本市である。
カナレット画『センサの日、サン・マルコ広場に帰還するブチントーロ船』[カナレット画『センサの日、サン・マルコ広場に帰還するブチントーロ船』] 最後に付け加えるべき事は、ヴェネツィア共和国の最後の時代、人々の話によれば、もはや浪費出来る余裕が殆どなくなった時、指輪は直ぐに回収出来るように糸で結び、投げる行為は単なるシンボルになっていた。

1792年5月16日のセンサの祝日の日、新しくフェニーチェ劇場が開場した。ヴェネツィア共和国最後の《海との結婚》は1796年、最後の総督ルドヴィーコ・マニーンが取り仕切った。現在儀式はキリスト昇天祭後の最初の日曜日に伝統に則って行われている。 ……」
  ――マルチェッロ・ブルゼガーン『ヴェネツィアの神話と伝説』(Newton Compton editori)より
  1. 2013/05/04(土) 00:04:36|
  2. ヴェネツィアの行事
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手知ったヴェネツィアを先ずは訪れて、各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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