イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

民話に表れたヴェネツィア(1)――ジュゼッペ・ナリーン(3)

[続き]
「こう言うと、井桁の脇に反物を置き、そそくさと立ち去りました。そのため誰でも気付くように、この小広場に入ってきた最初の人がそれを持ち去ったのです。

この愚か者が反物も代金も手にせず帰宅して、母親にいかに正しく売るために行動したかの一部始終を語ると、彼女が怒り心頭に発したのも宜なるかなでありました。しかし本当の所を言えば、息子より自分に非があると思ったのです。息子曰く。《母さんが言ったようにやったよ! 何回か母さんは馬鹿な真似は止めなさいと言ったよね。いや全く、本当に母さんの事を信じてるんだ、僕は! 母さん大好きだし、子供って躾が大事だしね》。

グァルダーテロは母を慰めようとして言いました。《黙ってて、母さん。悪魔は人が言うほど悪いものじゃないよ。まだ言ってないけど、明日の朝、お金を受け取りに行くんだ。もうちょっとの辛抱だから》

事実翌朝、グァルダーテロは大理石の像のある小広場に再度赴き、彫像に言いました。《ねえ君、反物の代金、今呉れるかい?》。返事はありません。彼は暫くそこで待っていました。でも無駄でした。怒り狂って、ハンマーのような棍棒で何度も打擲を加え、粉々になるまで殴り付けました。

その時、彫像の中にピカピカのスクード金貨が大きな鍋に入っているのに気付きました。この大きな鍋を肩にゆっくりと担ぎ上げ、我が家に急ぎ、叫びました。《母さん母さん、僕を見て、ほら、こんなにゼッキーノ金貨を持って来たよ》

そう言って鍋をテーブルの上にぶちまけると、その発見の喜びのあまり、欣喜雀躍しました。母親は馬鹿ではありませんでしたから、直ぐにお金を全て拾い集めて、息子がこの事を村中に、愚かに触れ歩かないように言いました。《グァルダーテロちゃん、よく聞いて。チーズと牛乳を売りに物売りの女が来るから、この玄関の所にいて頂戴。小さい鍋を売ってもらいたいのよ》

彼は大変な大喰らいでしたが、母親の言付け通り玄関の所に座っていました。一方母親は、秘かに2階に行き、2リラ分の乾燥イチジクと干し葡萄を窓から落としました。それは雨降りと思われるほどの沢山の量でした。この阿呆のグァルダーテロは正に雨降りと勘違いし、母親の名前を呼びました。それを入れる盥かバケツを持ってきて欲しかったからです。

その間、それらを食べまくりました。食べれると分かったからです。そして腹が破裂しそうなほど食べると、寝に行きました。

その数日後、二人の左官がスクード金貨の事で難詰し合っているのを耳にしました。道でスクード金貨を見付け、お互いに自分の物だと主張しました。二人が口論している時、グァルダーテロは丁度そこに居合わせたのです。そしてその金貨のチャリンという音を聞いて彼らに言いました。《あんた方は二人ともお馬鹿さんですね! スクード金貨一枚でそんなにいきり立って。僕なんか偶然に金貨の一杯詰まった鍋を見付けましたよ。僕はおとなしくして、いい子してたから》。

裁判所がその話を聞き付けて、グァルダーテロを呼び寄せ、尋問を始めました。どこでその金貨を見付けたか、その日はどんな日であったか、鍋には何か封印がなかったか、と。そこで彼はお金は誰もいない館の、何も喋らない“唖”の男の腹の中に隠されていた、と答えました。

《あの日は、イチジクや干し葡萄が降りました》と言いました。裁判官達は、全員が納得出来る返答を聞いた時、《この子は気が狂っている、少なくとも頭は正常じゃない。サン・セルヴォロ島に送ろう、精神病以外の治療は必要ないから》と言いました。
サン・セルヴォロ島サン・クレメンテ島左、サン・セルヴォロ島、右、サン・クレメンテ島。イタリアのサイトから借用[サン・セルヴォロ島はヴェネツィアのラグーナにある島で、当時男用の精神病院がありました。一方女用の精神病院は直ぐ近くのサン・クレメンテ島にありました。]

こうしてこの息子の奇妙奇天烈が母親を裕福にし、彼女の深謀遠慮が彼の愚鈍を正常に戻し、俚諺の言うように、よく制御された船は滅多なことでは座礁しないのです。」
 ――Giuseppe Nalin著『Fiabe veneziane』(Corbo e Fiore Editori Venezia、1995)より

この民話で使われている伊語 scemo, sciocco 等は、日本語で《愚か、愚鈍、遅鈍、馬鹿、痴呆、脳足りん、愚者、阿呆、頓馬、木偶の坊、のろま、間抜け、お人好し、あんぽんたん》等の名詞・形容詞の意です。同じような意味の伊語を辞書から探しますと次のように夥しくあります。
allocco, asino, babbaleo, babbeo, babbione, babbuino, baggeo, baggiano, balordo, beota, bietolone, bue, capocchione, castrone, cetriolo, ciocco, citrullo, ciuco, coglione, coglioneria, cretino, dappoco, deficiente, dolce di sale, ebete, fatuo, fesso, gaglioffo, gnocco, gnoccone, gonzo, grullo, idiota, imbecille, inetto, insensato, insulso, istupidito, lasagnone, lavaceci, macaco, mammalucco, melenso, merlo, minchione, oca, ottuso, pappalardo, pecorone, pezzo d'asino, pinco, pippa(俗), pipparolo(俗), pippione(俗), pirla, pisellone, polentone, rammollito, rapa, rimbambito, scemo, scempio, schiappa, scimunito, sciocco, scioccone, semplicione, sempliciotto, sfiga di cazzo(俗)、somaro, stolido, stolto, stronzo, strullo, stupido, testa di cavolo, testa di rapa, testone, tonto, tordo, torsolo, vento gnocco, zucca vuota, zuccone, zugo(俗)  
  1. 2014/09/25(木) 00:02:39|
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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