イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

精神病理学者フロイトのヴェネツィア

岡田温司著『フロイトのイタリア――旅・芸術・精神分析』(平凡社、2008年7月25日)を読みました。著者によれば、ジークムント・フロイト(1856.5.6モラヴィアのフライベルク(現チェコ、プシーボル)~1939.9.23ロンドン)はイタリアに大変興味を抱いており、当時オーストリア領であったトリエステに滞在したその後、40歳の時、1895年8月23日初めてイタリア領ヴェネツィアに足を踏み込んでイタリア旅行を始めたそうです。それから後20回以上、イタリアを訪れたとあります。イタリア美術にも大変関心があったようです。 
フロイトのイタリアその後ヴェネツィアには、1896年8月30日、1897年8月25日、1898年4月8日、1898年9月10日、1902年8月28日とオーストリアから南下して来て、ヴェネツィアの地を踏み、その足でイタリア旅行を始めたのだそうです。 

「フロイトの思想および精神分析の理論の形成に、実は彼のイタリア旅行と、この国の芸術や文化が深くかかわっていた」と述べられているように、本書の目次《イタリアからの便り、前・後篇》《イタリアへ向かって/生殖器》《石は語る》《レオナルドとミケランジェロへの挑戦》《イタリアのフロイト――カトリシズムとファシズムの狭間で》といった章から、フロイトのイタリアへの興味が伝わってきます。この本の《1895年夏、ヴェネツィア》は次のように始まります。

「一八九五年の最初のイタリア旅行がヴェネツィアだったというのは、おそらく偶然ではないだろう。二〇年近く前のトリエステ滞在のことがフロイトの念頭にあっただろうし、地理的にみても、イタリアへの通過儀礼がまずヴェネツィアからはじまるというのは、ウィーンの旅行者にとって、ある意味でごく自然な選択だったであろう。しかし悩みの種がないわけではなかった。誰を旅のパートナーにするかである。……」

「……有頂天の彼にとっては、弟アレクサンダーがさっそくイタリアの洗礼を受けて、初日から《五回も一リラを騙し取られた》ことでさえ、《おもしろい》と感じられる。この国では旅行者がペテンや窃盗のいいカモにされる、人口に膾炙したこの風評が現実となるのを目の当たりにして、フロイトは、どこか楽しんでさえいる様子である。……」

「《……昨日はそれからサン・マルコの鐘楼に登り、さらにリアルト橋から出発して町を歩いて横断してみた。そのおかげで、かなり奇妙なものまで見ることができたよ。フラーリ聖堂とスクオーラ・サン・ロッコを訪ね、ティントレット、ティツィアーノ、カノーヴァの作品を心ゆくまで楽しんだ。広場のカフェ・クアードリには四回も立ち寄り、手紙を書き、買い物のための交渉に取りかかった。……》(フロイト書簡)」

「かつて一八世紀には、イタリア旅行は《グランドツアー》と呼ばれ、一部の貴族や富裕層にのみ許されていた特権で、古代とルネサンスへの彼らの憧憬を刺激し、そして満たすものであった。その旅行は、芸術家や文学者、哲学者たちを駆り立てていたばかりでなく、貴族や富豪の若者たちにとっては、人文主義的で博物学的な教育の最後の仕上げとなる必須のカリキュラムでもあった。

イタリアはまさに、文化と芸術と自然を学ぶための現地実習場だったのである。だが、《崇高》で《ピクチュアレスク》な馬車によるこの《グランドツアー》の時代は、いまや過去のものとなっていた。……」
 ――岡田温司著『フロイトのイタリア』(平凡社、2008年7月25日)                                                  
  1. 2015/02/19(木) 00:03:48|
  2. ヴェネツィアに関する言葉・文学
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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