イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

ヴェネツィアの伝説: ノーヴェ海岸通りの7人の魔女(2)

初期化してPCが直りました。 ウインドウズ10にUPしたのが原因かも知れません。――[続き]を続行します。

「幾晩かサンピエロータの船首の隙間に蹲り、帆と横静索の下に身を潜め、魔女の到来を待っていた。4晩の間、彼の待機は虚しく、5番目の夜、あの妖術使いの一団が乗船して来た。畏怖に囚われ、動かないようにしても、ニコロは恐懼に打ち震え、小さく小さくなっていた。

舵取りの魔女が例の決まり文句を唱えた。《一番手開始、二番手開始、三番手開始……》 と、七番手まで進んだ。しかし今回は舟は動かず、飛翔しなかった。《どうして?》 舵を握る老魔女が叫んだ。《何故、この(sta)阿呆な舟は動かないの?》 ニコロは震え始めた。今、多分魔女達は中を覗き込んで彼を見付けるかも知れない。しかし幸運なことに舵手はどうでもいい事を話し始めた。

そして《一番手開始、二番手開始、三番手開始……》 と、今回は八番手までいった。八番目で舟は動き始め、舵を握る老魔女は次のように付け加えた。《私は考えたんだよ、畜生女めが、お前達の誰かが妊娠したんだよ、誰にも分らんが……》 皆は笑って、お互いを探るように見、誰が身重なのか知ろうとした。そして人間が聞いたこともないような悍ましい言葉で、止めどなくお喋りを始めた。

舟は船首を南に取り、静かにスピードを上げ、飛んで行った。こんなに素晴らしい運行はかつてなかった。目的地に到着するのに約2時間だった。その時魔女達は、色々の形や大きさの船が一杯繋がれた大きな開廊の、船を隠すように守られた場所に舟を舫って、直ぐ様舟を降りた。

その時点でニコロは勇を鼓して隠れ処から出ると、周辺を見回した。そこはオリエントの大きな町の港だったが、どこだろう? 彼も舟から下りると身を潜めて土の固められた広い道を進んだ。よろよろ歩く2人の見知らぬ人とすれ違い、ここはどこか訊いた。しかし2人は返答もしなかった。

その時再度、周りを見ると、一つの教会に気が付いた。何度も聞いていた話のお陰で、サン・マルコの教会のように理解され、結局それがどこか分かった。何と、何と、そこはエジプトのアレクサンドリアだった。
棗椰子[棗椰子、サイトから借用] その時近くにあったナツメヤシから実の付いた小枝をちぎり取って上着の下に隠した。それから急いで元の道を引き返し、サンピエロータに乗って帆の下にうまく隠れ、7人の魔女の帰りを待った。待つも程なくして女達はお喋りしながら笑いこけて帰って来た。もしかしたらそれは魔女達の安息日の宴のようなものであったのか、あるいは悪魔達と何か約束でも交わしていたのか。

舟に乗り、自分の場所に腰を下ろすと、仲間を率いる老魔女が例の呪文を唱え始めた。《一番手開始、二番手開始、三番手開始……八番手開始》 そして高らかな声で嘲笑いながら付け加えた。《あんた達、猥らな女が一人、子供を孕んだんだ。》

約1時間半の飛行で、サン・マルコ広場の大鐘楼が直ぐに突然現れた。ヴェネツィアに帰還したのである。舟はフォンダメンタ・ノーヴェに停まって通常通り繋がれた。魔女達は下船すると立ち去った。

ニコロも降りると、この旅の戦利品、今までこの町では未見で、新鮮な未熟の棗椰子の小枝を握り締めた。それは彼の驚天動地の旅を証明する証だった。こうして皆彼の話を信じた。神父は彼の舟を聖水で清めに行き、以来魔女には使われることはなかった。

ブラーノ島では同じような話が伝わっており、詳細には異同があるが、本質は同じである。舟は輸送の人の物ではなく、漁師の物であり、当然ブラーノ島に係留された。魔女の数も7人ではなく12人である。飛行の呪文も、当然13番まで数え、飛行はエジプトのアレクサンドリアではなく、コンスタンティノープルである。この二つのもののオリジナルのヴァージョンはどういうものか、誰も正確には知り得ない。

あるヴァージョンによれば、この伝説から派生したものがあるかも知れないと言っておかねばならない。事実若いニコロは彼の舟を使った7人の魔女達の中に、ほっそりと元気溌溂した表情で、然るべき部位はちゃんとした曲線美を備えた、好感の持てる、一番若い魔女に気付いていたようである。こうしてエジプトのアレクサンドリアへの飛行後、帰還した夜、立ち去るのではなく、少し打ち解けた気持ちを抱いて魔女達に付いて行こうと決めた。」 (3に続く)
  1. 2016/07/27(水) 00:00:00|
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは十数年前。ヴェネツィアには即一目ぼれ。
その結果、伊語勉強のためにヴェネツィアの語学学校に何年間か数ヶ月通いました。
その後もヴェネツィアを訪れるたび、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら書くのが楽しいのです。

*図版はクリックすると拡大されます。

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