イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

日本の旅(1)

9月中旬、遠野、花巻、平泉と巡ってきました。宮沢賢治が愛した岩手県の旅は、云わば《“賢治銀河”の旅》といった趣があります。

遠野は2度目の訪問です。今回もまた祭日と重なったのですが、この度は町の周辺を歩きました。昔語りの民話の故郷は、得も言われぬ幻想の世界へ引き込みます。ちょっとした川や原、木立までも、何か名状し難い、深い含意を持って迫ってきます。

賢治の町、花巻もお祭の最中で、夜は9時頃まで華麗な山車や掛け声勇ましい神輿が練り歩きました。外人グループの神輿もありました。何かおどろおどろした興奮が身内に広がり、大町の神輿終了地点近辺で最後の一挺まで見納めました。
宮沢賢治記念館宮沢賢治記念館 2賢治記念館に行き、賢治の遺品等が目に触れるや「どこかでふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションと云ふ聲がした」ように思われ、賢治銀河の星座巡りといった心地で館内を巡歴しました。賢治作詞・作曲の『星めぐりの歌』、「あかい目だまのさそり/ひろげた鷲のつばさ/‥‥‥」を思わず口ずさんでいました。
『星めぐりの歌』.曲については次のYoutube星めぐりの歌でどうぞ。
偶々傍近く居た学芸員の人に『永訣の朝』の「あめゆじゆとてちてけんじや」の事を尋ねると、土地の訛りで朗詠して下さり、「あめ雪取ってきて賢兄ちゃん」と聞こえ、その岩手県の発声に大変感動しました。土地の発声での朗読を Youtube でどうぞ、永訣の朝
[「けんじや」の意味は賢兄ちゃんの事ではなく、お願いしますという土地の丁寧語だそうです。2011.11.19追記]

それにしても賢治は『銀河鐵道の夜』の中で、何故ジョバンニやカムパネルラ、また悪戯好きのザネリといったイタリア風の人名を使用したのでしょうか。イタリアお宅の私が勝手に空想しますと、パードヴァ時代ガリレーオ・ガリレーイが望遠鏡を発明し、ヴェネツィア共和国政府の要職にあったジョヴァンニ・F・サグレードと親友だったことから、1609年、ヴェネツィアのサン・マルコ鐘楼の上で、筒眼鏡として遠くの敵船等の発見に便利な物として、時の総督レオナルド・ドナに実際に覗かせた話は広く知られたことです。ガリレーオ自身も倍率30倍のその望遠鏡で木星の四つの衛星、月面の凹凸、太陽の黒点等を発見したように、実質的な天体観測がイタリアから始まったことを受けて、自分の作中人物名にイタリア名前を使用したのでしょうか。

ジョバンニは普通のイタリアのファースト・ネームですが、ザネリは『姓・名事典』では見付かりません。カムパネルラと言えば、高校の世界史で学んだ16-17世紀の理想主義哲学者トンマッソ・カンパネッラのことが思い浮かびます。
パーオロ・サルピ像[サンタ・フォスカ広場のパーオロ・サルピ像]  「1591年出版した『感覚哲学』が革命的過ぎたため敵を作り、郷里を捨て、各地を遍歴。ヴェネツィアでもガリレーオやパーオロ・サルピと親交を持った。郷里に戻るや理想社会実現のために、修道院に革命運動の秘密組織を作り、運動の準備中捕らえられ投獄された。26年間の獄中生活後、若干の自由を得、『太陽の都』を書き、理想社会を提示した。」
と、彼はガリレーオやサルピとも繋がりがありました。

こういう話を読むと、初めてヴェネツィアに語学留学して借りたアパート、大運河に面した旧モチェニーゴ館で、1592年異端の罪で捕まり(当主ジョヴァンニ・モチェニーゴの裏切りによる)、ローマに送られた哲学者ジョルダーノ・ブルーノのことを思い出してしまいます。1600年彼がローマのカンポ・デイ・フィオーリ広場で焚刑になった2月17日から、正確に400年経った大聖年の2000年のこの日を含む2ヶ月間、この館の一室を借りていました。命日当日裏切り者の館の庭にブルーノの亡霊が現れると聞き、夜明け近くまで起きていましたが、結局《Piacere》と挨拶出来ませんでした。
  1. 2008/10/05(日) 00:18:45|
  2. | コメント:2
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コメント

宮沢賢治の「星めぐりの歌」というのは私はどうしても思い出せないんですが・・・
それにしてもペッシェクルードさんのブログは、話が賢治や花巻市や、何から始まってもいつも行く先がヴェネツィアに落ち着くのは非常に面白い。門外漢の私には、宮沢賢治とヴェネツィアは今までどうしても結びついていなかったので、よい勉強になりました。
  1. 2009/03/23(月) 16:29:08 |
  2. URL |
  3. September30 #-
  4. [ 編集 ]

september30さん!
賢治の「星めぐりの歌」は童話『双子の星』の中にあります。
「あかいめだまのさそり/ひろげた鷲のつばさ
 あをいめだまの小いぬ/ひかりのへびのとぐろ
 オリオンは高くうたひ/つゆとしもとをおとす
 アンドロメダのくもは/さかなのくちのかたち
 大ぐまのあしをきたに/五つのばしたところ
 小熊のひたひのうへは/そらのめぐりのめあて」
とあり、賢治の作曲で、なかなかいい曲です。
  1. 2009/03/24(火) 11:37:25 |
  2. URL |
  3. ペッシェクルード #/plE8HKU
  4. [ 編集 ]

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Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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