イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

クシシトフ・ポミアン著: ヴェネツィアの『コレクション』(2)

(続き)
「同時代の絵画に対する強い関心が顕著に見られるのは、ヴェネツィア貴族界には所属せず、買い取りや注文を通して自分のコレクションを形成する蒐集家においてであった。それはまず第一に、ヴェネツィア在住の外国人である。たとえば英国領事ジョゼフ・スミス(1674~1770。1700年頃以降ヴェネツィアに在住)は晩年、英国国王にカナレット54点、マルコ・リッチ42点、ロサルバ・カリエーラ38点、ツッカレッリ36点、セバスティアーノ・リッチ28点、ジュゼッペ・ノガーリ9点、カルレヴァリス6点、ピエトロ・ロンギ4点を売却した。
マンジッリ・ヴァルマラーナ・スミス館[スミスが住んだスミス・マンジッリ=ヴァルマラーナ館] しかしそれは、もっとも古い作品の堂々たるコレクションと共に、スミスの宮殿に集められた同時代ヴェネツィア芸術家たちの絵画、素描、版画の一部にすぎなかった。ティエポロが欠けており、一般に歴史画にはあまり関心を示していないのに比べ、ロサルバ、マルコ・リッチ、カナレット、ツッカレッリが大きな位置を占めているのは、当時のヴェネツィア絵画のなかでスミスを特に引きつけたのが、目に見える世界の表象であったことを示している。
[ジョゼフ・スミスについては2012.10.13日のヴィゼンティーニ等で触れています。]

またその装飾的価値ももちろんあっただろう。カナレットの作品のうち、戸口上部の装飾画が13点、ツッカレッリの作品には11点あった。スミスはフランドル絵画もいくつか集めていたが、そこでも特に評価していたと思われるのは、目に見える世界の表象である。ところが古いイタリア画家においては、彼はとりわけ宗教画を好んでいた。

スミスの場合はいろいろな点で例外である。かくも長い期間にわたって、外国人がこれほど多彩な役割をヴェネツィア文化生活において演じたことはなかった。また、知っておくべきことだが、彼に匹敵するようなコレクションを揃えた人はだれもいなかった。けれどもまさにその規模のために、スミス・コレクションはまるで拡大レンズのように、それなくしては見定めることが難しいような傾向(といっても、それは当時の蒐集家たちの傾向でもあるのだが)を明瞭に示してくれる。

同じように、非常に充実してはいるが、もっと小規模で知名度も低いシューレンブルク元帥(1661-1747。1715年以降ヴェネツィア共和国に居住)のコレクションは、スミスとは反対の傾向を明らかにしている。それは実際ピアツェッタ、ピットーニ、ジャン・アントニオ・グワルディの数多くの作品を収めており、歴史画に際立った特権を与えていた。

他の外国人蒐集家たち、たとえばジギスモント・シュトライト(1687-1775)などは、この二つの極のあいだに位置しており、とりわけ古い作品に関心を抱いていた。その何人かについては、のちほどまた触れることになるだろう。

ヴェネツィアの蒐集家を生み出す第二のグループは、《中産階級》という通用範囲の広い言葉で呼ばれる。その中には、歴史の浅い貴族やブルジョワジーもいれば、聖職者階級に属し、懐胎期にあるインテリゲンツィアを代表する人々もいた。それはまた《自由業》に携わっていたり(医師、弁護士、芸術家)、卸売業者、数は非常に少ないけれども請負業者であったりもした。

これらのカテゴリーの第一番目、すなわち事実上の知識人ではあるが公の身分は明らかにそれとは異なる人々の趣味は、18世紀を通して、連続する三つの世代に属する三人の人物のコレクションによって例証されうる。

一番時代が古いのは、医者の息子であり、死の6年前に女帝マリア=テレジアによって伯爵に叙せられたアントン・マリア・ザネッティ(父―1680-1767)である。1720年以前に早くも、ピエール・クロザや、生涯友情で結ばれたピエール=ジャン・マリエットと交友を始めたザネッティは、パリとロンドンに旅行したあと、ヴェネツィアにあって、外国人の何人かの大蒐集家たちの親しい代理人として、彼らの売買の仲売人をつとめた。彼らにとって、ザネッティ以上の相手は見つけることができなかった。

ザネッティは自分自身芸術家で、才能ある版画家・風刺画家であり、古代遺物にも精通していた――彼の所有する彫刻石はジョゼフ・スミスのものよりはるかに優れている。彼はまた、集めた作品によってばかりではなく、美術骨董界で重きをなす全ての人々で構成された交友関係における影響力によっても、当時のヴェネツィア蒐集家のうちでもっとも重要な人物の一人であった。

さて、彼のコレクション中の絵画は、ほとんどが同時代のものであった。なかでも彼の友人であったセバスティアーノとマルコ・リッチのいくつかの作品、またツッカレッリの二枚の風景画、ロサルバのパステル画数点とミニアチュールが含まれている。それに加えて版画のまれに見るコレクションがありレンブラントならびにカロの全作品を含んでいた。また過去の巨匠と同時代の芸術家の素描コレクションもあり、セバスティアーノ133点、マルコ・リッチ141点が含まれていた。……」 (3に続く)
  1. 2017/06/29(木) 00:03:00|
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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