イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

ヴェネツィアの聖マルコ伝説(1)

ヴェネツィアには独自の聖マルコ伝説があるそうで、それを記載した『Leggende di Venezia』(Armando Scandellari著、Edizione Helvetia、1984刊)という本をヴェネツィアで見付けました。抄訳ですが、紹介してみます。
『Leggende di Venezia』「聖ペテロの弟子の福音史家マルコは、イエスの言葉の普及のためにローマから世界に旅立つ時、歴史が述べているようにエジプトに向かって南への道を辿ったのではなく、先ず初め、ローマ帝国の大都市《アクィレーイア(Aquileia)》(ヴェネツィアの東にある)へと北を目指したということを、ヴェネツィア人は正しいと思っている[史書曰く、アレクサンドリアで布教し、その地で司教として殉教した]。

アクィレーイアで、彼は直ぐに多くの市民を改宗させた。この布教活動からの帰途、聖エルマーコラ[アクィレーイアの聖エルマゴラス]と《七つの海》[古代ローマ人の言う、ヴェーネト潟のこと]を航海し、ヴァルスガノッタの山々から下ってくる川ブレンタの古い河口の近くで、激しい嵐に襲われ、現在、(ヴェネツィアの)サン・フランチェスコ・デッラ・ヴィーニャと呼ばれる場所に避難した。

当時ラグーナ(laguna―潟)は無数の草木に覆われた島々や岸辺、葦の生い茂った、人気のない水面だらけといった状態だった。水は楽しそうに戯れ流れ、潮流はぐねぐね蛇行し、時に通行可能の運河が出来たりした。そこでは、沢山の小鳥がかしましく囀り、風の動きで水面が盛り上がってくる、浮遊する平原の最中に居るかのようだった。

聖マルコは嵐が静まると、出来る限り休息し、草を枕に眠った。熟睡している時、青い稲妻のような振動がして、夢の中に美しい天使が舞い降りた。「汝に平和を、我が福音史家マルコよ。いつの日か知るがいい、この島に帰ってくることを」(その間に人々が、この地を曙光よりも美しい街に仕上げている筈だ。人の住む町の中で、最も素晴らしい、信じ難いほどの町に……)。

ヴェネツィア最初の守護神、聖テオドールスが聖マルコに取って代わったのは何故だったのか。聖テオドールスに誠実だったヴェネツィア人は《煩わしがられた》し、厳しく応じられもした。聖テオドールスは余りにもギリシア的であり、その重々しい権威をラグーナ社会に押し付けるビザンティン世界と結び付き過ぎていた。

それ故、カール大帝の息子ピピンに率いられた強力なフランク軍に対する、ラグーナでの伝説的反撃の後、ヴェネツィアは自分達の守護聖人を選ぶことにした(この選択は正に聖マルコに下った)。一福音史家、純粋無垢の聖人、死を恐れぬ勇猛果敢の人、貨幣の上に彼のライオンを刻印したり、旗や船をライオンで飾ったり、本土からほど遠い国境や地中海の孤島でもその存在を際立たせるには、ライオンが相応しい。

[ヴェネツィアでよく目にするように、聖マルコ(Marco)を表示する時は、有翼のライオンで表されます。他に聖マタイ(Matteo)は有翼の男子、聖ルカ(Luca)は雄牛、聖ヨハネ(Giovanni)は白髪の老人であったり、髭のない青年で表されたりします。]

しかし、聖マルコがそうした存在であるためには、町中にそれに値する確固とした物、人々が日常手で触れることの出来るもの、即ち、彼の聖遺物が必要だった。それを手に入れるのは、当時難しくはなかった。」 (続く)
  1. 2008/11/02(日) 00:01:57|
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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