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イタリア、とりわけヴェネツィア(Italia, soprattutto Venezia)

ヴェネツィア偏愛、時には脱線。

ジョルジョーネ(3)

ジョルジョーネの『嵐』(ヴェネツィア、アッカデーミア美術館像)は、描かれた直後からその主題が判らず、色々の研究者が色々の説を述べているという作品だそうです、謂わば研究者の数だけ説がある訳です。私などは主題等判らずとも何故か作品に引き込まれてしまいます。
ジョルジョーネ『Tempesta(嵐)』アッカデーミア美術館……若桑みどりさんと言えば、『クアトロ・ラガッツィ――天正少年使節と世界帝国』(集英社、2003年10月30日)という大部の本を書かれ、傑作として頓に有名ですが、亡くなられる前、大分前の事、若桑さんがNHKでこの『嵐』に関わる諸説を紹介されたことがありました。それが本に纏められ、『絵画を読む――イコノロジー入門』(若桑みどり著、NHKブックス、1993年3月1日)として上梓されました。
クアトロ・ラガッツィクアトロ・ラガッツィ裏絵画を読む「……またやっかいなことには、一九四二年に発表されたこの絵のX線写真によると、作者ははじめ、男性が描かれている左の下の部分に、全裸の女性が川に足を浸しているところを描いていたことがあきらかにされた。つまり、作者ははじめ画面の左側に男性ではなくて、女性を描こうとしたということになる。このことをどう解釈するかによって主題の考え方がちがってくる。

たとえば、この事実をもとにして、作者は結局男でも女でもよかったのであるから、特定の主題には固執していなかった、ととる場合である。このような受け取り方をする学者のなかには、この絵には特定の主題はなく、やはり一種の風景画であったという結論にいたるものもいる。

また第二の種類の考え方は、作者は最初男女ではなく、《二人の女》によってなにかを表現しようとしたが、後にこれを男と女に変えたのだ、というものである。それは蓋然性が高い考え方で、これにもとづくと、バッコスの誕生という線は消えてしまう。そして、2人の女性像、いっぽうは川に足を浸した女で、いっぽうは大地にいて子供を養っている女という二人の女性像からなる主題が重視されてくる。

そこで、この当時流行していた《二人の女》の対峙する図像を探ってみると、まず浮かびあがってくるのが、《二人のヴィーナス》という図像である。すでに第二回で扱ったティツィアーノの『聖なる愛と俗なる愛』は、ジョルジョーネと同門、同時代の画家がこの二人のヴィーナスによって地上的な愛と天上的な愛を象徴させたことがあきらかになっている。

一九九一年に出版されたマルセラン・プレイネという学者の『ジョルジョーネと二人のヴィーナス』(邦訳なし)という本はこういう考え方をしたもので、単独の女性像は天上的なヴィーナスで、大地に座って子供に乳をやっている女性は豊饒のヴィーナスだと考える。そうなると、女性が抱いている子供はクピドということになる。
……
ここで消えた女のことをまた考え直してみると、あるいは、作者ははじめから男と女を描くつもりで、ただ、最初に女を左側に描いてみただけであったかも知れないという推論が成り立つ。この場合には、女は最初から子供をもっている必要はなかったということになる。制作の過程で作者は左に男性を、右に女性をおくことにし、さらに女性を子供を抱いて表わした方がいいと考えたかも知れない。

最初から男女が考えられていたとする説のなかで、もっとも緻密な推論を組み立てたのが、サルヴァトール・セッティスという学者の唱えた《アダムとエヴァ》である(『解釈されたテンペスタ』邦訳なし)。 ……」
  1. 2019/06/07(金) 08:53:27|
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ペッシェクルード(Pescecrudo)

Author:ペッシェクルード(Pescecrudo)
初めてイタリアに行ったのは1994年、ヴェネツィアには即一目ぼれ。その結果、伊語会話勉強のためにヴェネツィアの語学学校に数年間の間、何ヶ月にも渡り通いました。
その後勝手を知ったヴェネツィアを先ず訪れて、イタリア各地にも足を伸ばしています。
東京に住んでいるので、憧れのヴェネツィアについて何かしら触れているとヴェネツィア気分で楽しいのです。

*図版・写真はクリックすると拡大されます。

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